幻の小麦「ハルユタカ」の麺と
町民の熱い思いが心をあたためる。

ひでちゃん小麦の麺商品

株式会社マルワ製麺
窪 和広さん

1963年の創業以来、麺作りを通して食の大切さを伝え続けている。食べた人に「おいしい!」と笑顔になっていただくことに何よりもこだわり、手間を惜しまず技術を磨いている。新しい商品企画から製造・販売まで一貫体制で美幌町の豊かな食文化の創造に尽力している。

ハルユタカ小麦栽培

有限会社三雄産業
喜多 秀雄さん

美幌町で農業に情熱を注ぎ、30年。オホーツクエリアでは生産が難しいと言われてきた幻の小麦「ハルユタカ」作りに挑戦。2014年から栽培を開始し、3年の試行錯誤の末に商品が誕生。「ひでちゃん小麦」として商標登録し、マルワ製麺はじめ多彩な事業者とともに製品化に取り組んでいる。

北海道ではでもごく一部の地域でしか作られていない小麦「ハルユタカ」を使ったラーメンやうどんは、強い香りとモチモチとした食感で、いまでは美幌町を代表する名物として人気です。でも、オホーツクエリアのような寒冷地では生産管理が難しく、作付けを辞める農家が増えたため、幻の小麦と呼ばれていました。どのようによみがえったのか、生産者である三雄産業の喜多秀雄社長とマルワ製麺の窪和広社長に語っていただきました。

食べた人を笑顔にする
新しい商品開発を始動

「最高の小麦を作ってほしい!」
マルワ製麺の窪社長が、農業を営む喜多社長へ依頼した、この一言がすべての始まりでした。きっかけは、農林水産省が2010年から推し進めていた「6次産業化」。1次産業である農業だけではなく、加工などの2次産業、さらにサービスや販売などの3次産業が一体化して新たな付加価値を生み出そうという取り組みです。
「美幌ならではのおいしい商品で食べた人、そして町を元気にしたい」と長年、原材料の特性に合った麺作りにこだわってきた窪社長が、本当においしい小麦で本当においしい麺を作りたいと、喜多社長へ相談を持ちかけました。そして、幻の小麦「ハルユタカ」栽培プロジェクトがスタートしたのです。

難しいと言われてきた
幻の小麦作りに挑戦

「作ってやろうじゃないか!」
窪社長から「ハルユタカ」栽培を打診され、喜多社長の情熱スイッチが入りました。確かに、栽培期間が短く、天候の影響を受けやすいため、一般的に出回っている小麦品種に比べて扱いが難しいという「ハルユタカ」。6次産業化担当である農林水産省の担当からも、この地域での栽培は難しいと言われたそうです。
でも、かつてはオホーツクエリアでも作られていたのだから「できない訳がない!」と、喜多社長は意地でも成功させたいという想いを強くします

収穫までの150日間、
繊細な作業の連続

美幌町は、寒暖の差が激しい地域なので、喜多社長はあえて初冬ではなく春5月に作付けし、短期間で収穫する方法を選びました。
「ハルユタカは、雨や病気などに弱いため、収穫までの150日間、とても繊細な管理が求められます」と、喜多社長。窪社長も「晴天が続いても、豪雨でも小麦は大丈夫かなと何度も畑に足を運びました。収穫に立ち会ったときには、感謝と感動で胸がいっぱいでした」と、振り返ります。
これほどまで手間がかかるものの、収量は普及している小麦の約半分。「生産性だけを考えて栽培できる小麦ではないです。でも、窪社長に、原料ではなく“商品”を作っているのだと言われ、意識が大きく変わりました」(喜多社長)。

ひでちゃん小麦の
新商品が誕生

「ハルユタカ」収穫後、さらに1年以上の試行錯誤を重ねてようやく商品が誕生。農林水産省6次産業化事業として北海道で初めて認定され、「ひでちゃん小麦」として商標登録されました。
「農家だけでは絶対に完成しなかったでしょう。マルワ製麺の強い想いと卓越した技術力をはじめ製粉会社、包装メーカー、デザイナーなど、実に多彩な事業者との出会い、協働作業から“ひでちゃん小麦”の商品は生まれました」(喜多社長)。
「私のモットーは、北海道の大地に根ざした麺づくり」という窪社長は「こうして生産者の顔が見える商品が完成し、美幌町の名物として全国の食卓に笑顔をお届けできるのが本当にうれしいですね」と、感慨深く語ります。

喜んでいただけるのが
何よりの喜び

「ひでちゃん小麦」を加工した麺商品は、ふるさと納税の返礼品として人気です。「乾燥はるゆたかうどん」は、小麦本来の味わいを楽しんでいただけるよう、割り箸くらいの平麺。茹でるとくっつきやすいので、たっぷりのお湯でパラパラ入れるのがコツです。「かに甲羅みそラーメン」は、簡単に作れるのにかにみその風味がたまらない本格的なラーメンだと、大評判!どちらも、なめらか喉ごしと弾力のある食感で、一度召し上がった方から「この麺を食べたら他のは食べられない」「買ってよかった」と、喜んでいただいています。
生産から加工、包装、配送までたくさんの人の想いがつながった、とっておきのおいしさ。小さな町の大きな挑戦は体も心もあたためます。

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美幌町