オホーツク焼の藍色と白の世界を
永く愉しんでいただけるとうれしい。

陶芸品

美幌窯 塩入 稔さん

美幌町の開拓農家に3人兄弟の末っ子として生まれる。岩見沢、秋田での修行後、1976年に故郷の実家敷地内に「美幌窯」を築窯し、5年後に工房を移築。「全道展」「伝統工芸新作展」「日本陶芸展」など入選多数。独特の作陶手法で、多くの人に愛用される焼き物づくりに日々向き合っている。

オホーツクの荘厳な海をイメージさせる陶器「オホーツク焼」。藍色に輝く海、砕け散る波や凍てつく瞬間のシャーベット状の水面(みなも)が表現され、手にした人の心をオホーツクへ誘(いざな)います。直接窯元を訪れるファンも多いという塩入さんに、オホーツク焼の特徴や作陶のこだわり、美幌町への想いなどをお聞きしました。

町民にも愛用されている
世界に一つだけの陶器

瑠璃色、藍色、青色、そして白色が繊細なグラデーションを描く「オホーツク焼」は、一つひとつの模様が異なるという世界に一つだけの陶器です。
「デザインはあまり具体的に決めているわけではないのです。海なのか山なのか、使う方が自由にイメージをふくらませてほしいです」(塩入さん)
多くの町民の家や店舗でよく見かけるなど、永く大切に愛用したくなる陶器であることを物語っています。ふるさと納税の返礼品としても人気で、コーヒーカップや湯飲みなどが全国へ旅立っています。

美術的な要素だけではなく
使いやすさも重視

印象的な藍色と白の色彩は、釉薬(ゆうやく)をかけあう「青釉白流し」という独特の手法によって表現されています。火山灰が原料の「るり釉(ゆう)」と稲の灰釉を使っています。複数の釉薬を使うので、どうしても厚みが出て失敗しやすいそうです。製品となるのは、作陶したうちの50〜80%という難しい手法なので量産には向いていません。
「初期の頃は、もっと薄いブルーの色合いでした。お客さまのご要望に応えるように作品を作り続けるうちに、独立から10年くらいでいまのオホーツク焼の手法と色味を確立できました」
オホーツク焼ならではの深く艶めく青色は、いわばお客さまとのコラボレーションによって生まれたというわけです。塩入さんは、美術的な要素とともに食器としての使いやすさも重視。日常の暮らしになじむ形状やサイズも魅力です。

高校時代のクラブで
焼き物の不思議に魅了された

塩入さんが、焼き物に興味を持ったのは高校時代。網走市の高校で焼き物クラブに入ったのがきっかけでした。それ以前は、画家か彫刻家になりたかったそうです。
「焼き物は、絵も描けるし彫刻もできます。さらに泥を焼いて陶器になるという不思議さに魅了されました」
塩入さんのお父さん・常芳さんも、農業を営むかたわら美幌窯を手伝っていました。2010年、美幌窯創設35周年に「父子展」を開催。その3年後には常芳さんの米寿と引退を記念して「特別作陶展」を開きました。オホーツク焼の青と白の世界に、どこかぬくもりが宿っているのは、塩入さんのご家族との思い出も溶け込んでいるからなのでしょうか。

オホーツク焼で
美幌町の認知度を高めたい

2020年1月に厚生労働省から連絡があり、「第56回献血運動推進全国大会」の記念品として花瓶400本の発注がありました。毎回、日本全国の伝統工芸品の中から選ばれ、前年は九谷焼が選出されています。
「何百年という長い歴史のある九谷焼と、まだ40年そこそこのオホーツク焼が肩を並べるのは大変恐縮しているのですが、いままでやってきてよかったなぁと、やはりうれしかったです」
これからも作り続けることで、美幌町の認知度を高めていきたいし、より多くの方に永く使っていただけると、さらにうれしいですねと、笑顔で語ります。

美しい風景に囲まれながら
土をひねり続ける

自然豊かな美幌町でいちばん好きな場所は、という質問に「実家のある田中地区の夕陽」と、少し照れながら教えてくれた塩入さん。幼少期には牧草地が広がっていたとのことです。そこで自由に遊びながら、美しい夕陽に照らされた記憶が、60歳代後半になったいまでもずっと心の奥で輝いているのでしょう。
塩入さんの夢は、85歳まで現役で仕事をすることだそうです。
「ろくろを回して土をひねり、カタチができ上がっていくのが楽しい。このまま続けていけたら幸せです」。
エライ先生になるのではなく、職人としてお客さまに喜んでいただける作品を作り続けたいという塩入さんの工房では、野外展示も常に開放。四季折々の庭園の色合いとオホーツク焼の器がお互いを引き立て合うように調和し、美しい風景を描いています。
「どうぞ、オホーツクエリアに足を運んだ際は、お気軽にお立ち寄りください。実際に手で触れていただけるのを器たちも心待ちにしています」
きっと、おだやかで優しい時間が流れるでしょう。

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